研究者   
番号 19-1-36
研究課題

ダブルパルスによる電子材料のレーザースクライビング技術の開発

成果

本研究では、装置の信頼性・耐久性に十分な実績のあるナノ秒オーダーのQスイッチYAGレーザーを使用して、電子材料に対して高アスペクト比で、かつマイクロクラックや溶融付着物の少ないスクライビング加工(溝加工)の実用化を目指した。

ナノ秒YAGレーザーによるスクライビング加工を実用化するためには、2つの問題を解決する必要がある。一つが高アスペクト比を得ることであり、もう一つが溶融物の付着を少なくすることである。この2つの問題を解決するための技術として、本研究ではダブルパルスによるスクライビング加工を提案した。図1は従来のシングルパルス形式(上段)とダブルパルス形式(下段)のパルストリガータイミングとを比べた図である。本研究では、ダブルパルスの光源として、Continuum社製のナノ秒YAGレーザーSurelite-VとSurelite-Uの2台のレーザーを使用した。これら2台のレーザーを遅延発生器を介してシンクロさせ、パルス間隔30ns〜150nsまでのダブルパルスを発生させた。

 図2は、YAGの第4高調波(266nm)を使用して、SKD11に対してシングルパルス加工とダブルパルス加工で溝加工を行った結果である。第4高調波は紫外域の波長であるので、加工部周辺に及ぼす熱影響が少ないことが予想される。ダブルパルス加工におけるパルス間隔は100nsとした。加工速度が1〜2μm/sのときには、シングルパルス加工はダブルパルス加工と同等か少し優位な結果となったが、加工速度が4〜10μm/sとなるとダブルパルス加工の方がより深い溝深さを得た。一般的に溝深さは、加工速度の増加とともに減少していくものと考えられるが、加工速度1〜6μm/sの範囲では、速度が低いほど溝深さは浅くなっている。この状況をマイクロスコープで観察すると、溝底部に堆積物が観察された。つまり低速度においては、アブレーション加工によって吹き飛ばされるはずの噴出物が、何らかの理由でうまく排出されずに、溝底部に堆積したものと考えられる。このような状況を考慮すると、溝加工には最適な加工速度というものが存在するといえる。またダブルパルス加工はシングルパルス加工より極めて顕著な効果があるとはいい難いが、優位な結果を得ることができることは確かである。


助成者名簿一覧へ戻る